名手酒造店
漆器と歴史的町並みの町「黒江」万葉集にも詠まれた、潮の満ち引きで見え隠れする牛の形をした岩のある、美しい入り江が黒江の由来と言われています。
室町時代から起こった黒江の漆器つくりは、江戸時代になって入り江を埋立て漆器職人の町が出来、紀州徳川藩の奨励で大いに栄え「黒江塗」として全国津々浦々に広まりました。
のこぎり歯形に並ぶ漆器問屋と漆器職人達の家並みが、紀州連格子と共に織りなす江戸情緒漂う独特の雰囲気を残す漆器の町です。
【『黒牛』の名に込められた万葉のロマン】
紀伊半島の南部・熊野周辺には、古の時代から自然崇拝の地。温暖な気候と大量の雨に育まれた大森林は、森の霊気を感じる癒しと再生の地であり、人々を『熊野詣』へと誘った。
京都・奈良を出発して、最初に海を見るのは、和歌山市の南に広がる黒江の入り江。遠浅の浜に黒い牛が寝そべる姿の岩があったところから、『黒牛潟』と呼ばれ、柿本人麻呂などの万葉の歌人も歌に詠んでいる。
『黒牛』の醸造元・名手酒造店は、この海南市黒江の町中にある。蔵元の名手孝和氏は、『黒牛岩は、地震による隆起と埋め立てで、江戸時代には、地中深くに埋まってしまいました。ちょうど蔵のあたりにあったとされています。』と語る。黒江は、漆器の町であり、紀州徳川家の財政を支えるほどの繁盛。熊野詣と深い関わりながら発展しました。『初代、漆器で財を成した問屋の旦那衆や木地師、塗師、蒔絵氏などの職人を顧客に、酒造りを始めたようです』。創業は、幕末の慶応2年(1866年)のことという。
純米酒に、特化した『黒牛』ブランドが誕生したのは、平成2年。
『地酒の名前にしては、かわっているとよくいわれました。正統な純米酒を醸すにあたって、地元の伝承を背負う覚悟を示したものです。』現在、純米酒比率は、95%。万葉の昔を偲べるまろやかな味わいを目指していると、口調に固い信念をのぞかせる。
【純米酒は、2杯目、3杯目からがより美味しい】
純米酒を造るにあたって一番こだわるのが、酒造米の品質だという。
兵庫・岡山・滋賀・富山など、酒米の名産地へ生産者とのいい出会いを求め、丹念に歩いた。原料処理にも細やかな配慮が必要と、新しい精米機や洗米機も導入。
『純米本来の美味しさを大事にしたいのです。醸造用アルコールを添加した酒に比べ、飲み口は重めですが、旨みが豊か、まろやか。一口目とは別の味わいで、2杯目、3杯目からが美味しい酒に・・・・。』純米酒を語り始めると穏やかな人柄が、別人のように厚くなる。『和歌山県産米にこだわる蔵元の会』を発足させ、地元でも、酒米の契約栽培に取り組んできた。『高品質には、不断の努力が必要です。手の届く価格帯で、髙品質でなければ意味がないですから。』と自らに厳しい。
仕込み水は、弱軟水。貝殻層を通して、汲み上げるのでミネラル分を適度に含み、豊かな発酵力をもつという。
1,466~2,932円(税込)
【黒牛の逸品梅酒】こだわりの純米酒「黒牛」の純米原酒と、粒選りの紀州産「完熟南高梅」が出会い、逸品の梅酒が仕上がりました。